ユニクロの業界参入について

 独占禁止法による学生服販売業者の排除措置命令に続き、また業界がざわざわするニュースがありました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/62452081607398e1901a794e2748f8c2fca67327

 ユニクロの商品を公立高校が制服として採用というニュースです。また、すでに採用している中学もあります。

https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/schooluniform-tobaeast/

 いずれも唯一の「制服(制定された服)」ではなく”準”標準服という位置づけです。

 さて、制服(一部の学校は標準服と呼ぶ)とはそもそも何でしょう?精神的な側面として、学校への帰属意識を高める。愛校心をはぐくむ。入学式卒業式などの式典の際、全体としての統合感を表現するというのがあります。それとともに合理的な側面としての考察ですが、以前のブログでも触れましたが「学生服」というものの必要条件として(例外もありますが)

①私費調達(支給されるものではなく自分で買う)

②着用期間が決まっている(卒業したら着用しない)

があります。①の要件はデメリットでもありますので、なるべく安価に調達したいという要望が出ます。一方で②から得られるメリットとして

・着用期間が決まっている→校外でもその学校の生徒として識別できる

・統一した規格の服で指導しやすい(スカートの丈の長さなど)

・家庭間の経済格差が目立ちにくい

があります。では供給側(学生服製造メーカー・販売店)としての必要条件として合格発表後入学式までのごく短期間に

①納期絶対厳守(最悪でも入学式前日までには全て間に合わせる)

②体形や障害に関わらずすべての特殊な仕様を無条件で受け付ける (車いすでも着脱しやすい仕様、規格外の体形など)

 が求められます。これを担保するために専門の受注窓口と専門の供給体制(生地資材の原材料からお客様の玄関まで)を維持していなければなりません。最悪はお客様のご自宅まで入学式の前日深夜に持ち込むこともあります(当社はここ10年くらいはありませんが。。)

 業界外の方、できますか?

 さて、大宮北高のケースでユニクロの立場から考察すると、生徒数は1学年300人です。記事に価格が上下で約1万円とありますので、全校生徒が購入したとしても300万円の売上です。どこのユニクロの店舗が担当するかわかりませんが、年間国内舗売上6992億円店舗数813ですので、単純に単店の年間平均売上8.6億円です。実際の制服売り上げはもっとだいぶ少ないでしょうから、店舗からすれば1日分の売上にも満たない額です。その売り上げの為に学生服販売店に必須の専門の体制をとることができるでしょうか?

 では、大宮北高だけでなく近隣の学校も全部取り込めばいいではないかと考えますが、学校の制服の指定を取るという営業はとても困難です。今回大宮北高が採用したのですが、逆を言えば先生方はみなユニクロの商品も品質も値段もよくご存じでしょうし、そのうえで全国でまだ2例しかないという事です。制服の販売指定を取るという行為は、誰かが強い意志を持たないと果たせないものです。よく地元の業者は学校と癒着しているなどといわれますがそんな簡単な話ではありません。命がけで営業をしてやっととれるかどうかです。専用の営業部隊を作り定期的に営業に回り学校の受付の方と人間関係を作りやっと現場の先生につないでもらいその先生が前向きになって初めて職員会議にかけられ、管理職と職員全員の理解と了解ののちに数年後に参入できるかどうかです。もしくは今回の大宮北高がそうかはわかりませんが、管理職のトップダウンがなければ採用されません。そして学校の先生方は変化を嫌がります。それ以外の業務が忙しすぎるからです。つまり新規参入は難しいのです。癒着とかそういう問題ではありません。

 そしてユニクロを含む大手の販売価格が安い件ですが、海外製だからです。前職の商社のOEM部隊で海外生産をしていた立場から話しますが、1枚単位では採算ベースでは作れないのです。

 ここですでに採用されいてる鳥羽市立鳥羽東中学校・長岡中学校のスラックスの在庫を見てみましょう。

https://www.uniqlo.com/jp/ja/products/E429128-000/00?colorDisplayCode=09&sizeDisplayCode=004

 品切れです。つまりそういうことです。在庫切れたら終わり。買いたい人がその人に合ったサイズが無ければありません。入学式には着ていけません。入学式に 着 れないものを販売していいのでしょうか?

 つまり、価格面にメリットを感じる大手の商品は物理的に学生服業界に対応できないのです。しかし、学生服業界は決して安心しないでください。今回のこの2校の動きは、消費者の声の代弁なのです。平均給与が上がらないのに徐々に制服価格が上がり、耐えきれない人が増えてきているのです。傍から見れば「シーズン中は繁盛していてよさそうね。閑散期は暇そうで楽な仕事そうね。それでもやっていけるんだから相当儲けているんでしょう。」としか見られていないのです。このまま安易に値上げを続けていったらその行きつく先は、ユニクロによる席捲ではなく、間違いなく制服廃止 です。皆様お忘れなきよう。

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