スクール用品の洗濯

 今回はスクール用品に関する洗濯について説明したいと思います。選択するアイテムは大きく分けて

①学生服本体 ②体操着 ③ワイシャツ

 の3種類に分けられます。この3種類それぞれの洗濯の話をする前によごれについて説明します。(汚れについては齋藤勝裕氏のご著書「汚れの化学」SBクリエイティブ,2018 を参考にさせていただきました。ありがとうございます。)

 よごれは大きく分けて「水に溶けるよごれ」と「水に溶けないよごれ」の二つに分けられます。「水に溶けるよごれ」は水性インク、水彩絵の具、汗、血液などです。「水に溶けない汚れ」は油性インク、クレヨン、皮脂、手垢などです。水に溶けるよごれは水に流し続けられると衣類などからはがれてきれいになります。水に溶けない汚れに対しては、家庭で洗うためには界面活性剤(洗剤)を入れて洗います。界面活性剤が脂性の汚れを落とすメカニズムに関しては長くなるので割愛します。興味のある方は自身で調べるか私に質問してくれれば説明します。

 家庭洗濯に対して商業洗濯(ドライクリーニング)があります。家庭洗濯と同じように洗濯機(サイズは大きい)で洗っているのですが洗うために水ではなく有機溶剤を使って洗います。有機溶剤とは悪い子の遊び「アンパン」に使うシンナーなどのあれです。取扱注意のお品です。有機溶剤は水ではありません。水で洗う家庭洗濯は水溶性の汚れを落としつつ洗剤をいれて水に溶けない汚れも頑張って落とすのですが、ドライクリーニングは逆で水に溶けない汚れをおとしつつ、水に溶ける汚れはそのままでは落ちないのでやはり界面活性剤(洗剤)を併用します。ドライといっても水を含まない状態(ドライ)で洗うので、しっかり汚れは落ちます。お安いクリーニング屋さんに出すと脂性の汚れは落ちているはずですが普通の汚れがちゃんと落ちていない場合などは洗剤の管理がちゃんとできていないんでしょうね。。ではこのことを踏まえつつ、アイテムごとのお話をします。

①学生服本体

 最も多いのが毛とポリエステルの混紡のものです。ブレザータイプの上衣はもともとは”業界のど定番生地”「日本毛織の400番」に代表されるように毛100%で紺の綾織り(サージ)が主流でしたが家庭洗濯が容易なポリエステル混紡の素材に置き換わってきております。学生服の洗濯は主に商業洗濯(ドライクリーニング)に出すか、家庭で洗濯するかの2択となります。家庭洗濯の仕方については我々T&Yの主力お取引先の一つの菅公学生服様のサイトより拝借しますが以下がわかりやすいです。

 ポイントは必ず形を整えてネットに入れる。単独で洗う。手洗いモードにする。です。また、どうしてもウール混の為、洗うと少しごわごわになってしまう場合があります。そんな時は頭を洗う時に使うコンディショナーをお湯に溶かしてその中をくぐらせるといいです。

 制服などのウール製品を洗うとなぜごわごわになってしまうかですが、ウールは人の髪と同じでスケールといわれる突起物があります。それが水を含むと広がり、洗濯などでこすれると引っ掛かりあってしまいます。そのためごわごわとなってしまいます。

ウールの拡大図 ↓(岩堀手書き)

 人の髪も拡大すると同じような形状です。シャンプーの後に使うコンディショナーやリンスはこのスケールという突起物を包み込んで滑らかにする効果があるので、ウール製品にも同様の効果が期待できます。

 そのような効果を最初から施したもの(樹脂のようなものでウールの糸全体をコーディングしたもの)がウォッシャブル加工です。このウォッシャブル加工が施されていればウール100%のものでも家庭洗濯ができるものもあります。従い、ポリエステルが入っているかいないかで家庭洗濯ができるかどうかを判断するのではなく、ちゃんと洗濯表示を見て判断してください。余談ですが古くてごわごわになったウールのセーターなどもコンディショナーを使って元に戻すことができます。ぜひ試してみてください。

②体操着

 体操着はほぼ洗うために開発されたといっても過言ではありません。特に汗をかくことが多いので家庭洗濯(水溶性の汚れ)で水に溶ける汚れ(汗、血、涙、校庭の砂など)をしっかり落とせるように強めの物理的な洗濯でも耐えられるような頑丈な生地でしっかりと縫製してあります。しかし古くなってくると黄ばんでくる場合があります。これは洗っても残っている皮脂などの残留物が酸素と反応(酸化)して黄色くなってきます。この黄ばみを減らすのに酸素を無くすことはできないので残留物である汚れをなるべく減らす為、こまめな洗濯をするしかありません。

③ワイシャツ

 今回のブログを洗濯というテーマにしようと考えたのもワイシャツが発端です。学生用のワイシャツも体操着と同様よく洗うために頑丈なブロードという生地でしっかりと縫製されています。ワイシャツは体操着以上に皮膚と密着しているため皮脂汚れなどがつくため、水溶性の汗汚れに加えて水に溶けない皮脂汚れの対策が重要となります。皮脂汚れ対策として襟や袖口のスポット洗いが大切ですが、漂白剤を使うのも手ですが頑固な脂汚れには台所用洗剤

を該当箇所にしみこませて洗濯すると脂汚れはきれいになります。

 しかしそれでもワイシャツも体操着と同様に長く着ていると皮脂などの汚れが溜まっていきそれが酸化などで黄ばんできます。

 ワイシャツの白の色に関して皆さんからよく質問されるのがこのシャツは青いですか、黄色ですかということです。

 青いほうは蛍光白(蛍光晒、スノーホワイト)、黄色いほうがホワイト(オフホワイト)などといいます。通常の白といえばホワイトを指しますが学生服・ユニフォーム業界特有の蛍光白というのがあります。

 まずなぜ青っぽく見えるかというと蛍光とは分子が太陽光のうち波長の短い紫外線を吸収し、波長の長い青い可視光に変えて放出するため青白く見えます。青と黄色は補色(以下の図の対面の色、互いの色のあかりを交差すると白になる)

補色 - Wikipedia

なので、黄ばんできても見え方として白いので着用頻度の高い学生服やユニフォームに使われます。長く使うと本体は黄ばんできますが見え方は白なので長く使えますね。

 接客の際は、お客様から学校のこと以外にも商品のことなど、いろいろな事を質問されると思います。あいまいな知識と自身の経験などでは答えず、根拠を理解したうえで正しい説明を心がけていきましょう。

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